1976年から82年まで続いたアルゼンチンの軍事独裁政権下での民衆の生活の実態を、当時8,9歳のアンドレスという少年の目を通して描いた映画である。
舞台は、軍事政権時代のアルゼンチン北東部の州都サンタ・フェで、1977年夏から78年夏にかけての1年にわたるアンドレスと祖母オルガをはじめとする家族の物語である。
原題は『アンドレスはシェスタ(昼寝)何かしたくない』というのだそうだ。寝ている間に、どんなにひどいことになるかもしれないという意味のことを含んでいるようだ。
アンドレスは兄と一緒に、看護婦をして、夫とは別居生活をしている母親の下で暮らしている。ある日のこと、アンドレスの母親は、勤めている病院で、国家情報局の暴行によって瀕死の状態にある女性の治療に当たることになった。
重傷のこの女性とは実は以前からの顔見知りだった。そこでこのことを以前恋人だったアルフレドに伝えるべく、病院の外に設置されている公衆電話の元に走った。ところがアルフレドは留守のためか電話口には出ない。すっかり動転している彼女のところへ自動車が突っ込んできて、ひき殺された。
そのためアンドレスは父親の母・祖母オルガの下で暮らすことになった。祖母のオルガは家族の長であるだけでなく、近所では「レディ・オルガ」として知られている。地域のあらゆる情報を情報機関に伝えることによって、自分たちの安全を図っていた。オルガの家の近くには、反体制派を一掃しようとする情報局の拠点があり、住民たちの間では公然の秘密になっていた。
情報局の中心的人物であるセバスチャンは、サッカー遊びなどを通して、子供たちに近づいている。家にも学校にも安らぎの場を見出せないアンドレスは、以前棲んでいた家に忍び込み、母が隠していた反体制運動のビラを見つけ出した。それは母が元の恋人アルフレドから預かっていたビラだった。
軍事独裁政権下での陰鬱な空気、無言の圧迫感が一般民衆の間に色濃く漂っている。そんな当時のアルゼンチンの雰囲気が、子供の目を通してリアルに描かれている。
軍事政権時代に子供だったブスタマンテ監督は、自らの体験を元に、当時の家族と社会のあり方を子供の視点から描いたそうである。
一昨年、『瞳の奥の秘密』を見て感動して、アルゼンチン映画の魅力にとりつかれた。映像が実に素晴らしい。
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